EDR/XDR導入によるエンドポイントセキュリティ強化

はじめに

近年、サイバー攻撃は高度化・巧妙化の一途をたどり、従来のセキュリティ対策だけでは防ぎきれない脅威が増加しています。特に、PCやサーバー、スマートフォンといった「エンドポイント」は攻撃の主要な標的となり、ここを突破されるとランサムウェア感染や情報漏洩など甚大な被害につながります。本記事では、現代の脅威に対応するための次世代エンドポイントセキュリティソリューションである「EDR」と「XDR」について解説し、その導入によるセキュリティ強化のメリットと検討ポイントをご紹介します。

エンドポイントセキュリティの課題と従来の対策の限界

多くの企業では、PCへの不正アクセスやマルウェア侵入を防ぐために、アンチウイルスソフト(EPP: Endpoint Protection Platform)を導入しています。しかし、従来のアンチウイルスソフトは、既知の脅威パターンに基づいてブロックする「パターンマッチング」が主な検出方法でした。

現代のサイバー攻撃、特に標的型攻撃やゼロデイ攻撃、ファイルレスマルウェアなどは、既知のパターンにない振る舞いをしたり、検知をすり抜けるよう設計されています。そのため、アンチウイルスだけでは侵入後の活動や、侵入されてしまった後の対処が難しく、被害の発見が遅れ、拡大してしまうリスクがありました。

EDR (Endpoint Detection and Response) とは?

EDR(Endpoint Detection and Response)は、従来のアンチウイルスが「侵入を阻止する」ことに主眼を置いているのに対し、「侵入を前提として、侵入後の脅威を検知・分析し、迅速に対応する」ことを目的としたソリューションです。

EDRの主な機能

  1. 継続的な監視とデータ収集: エンドポイント上でのプロセス実行、ファイルのアクセス、ネットワーク通信など、あらゆる活動データを継続的に収集・記録します。
  2. 脅威の検知と分析: 収集したデータをAIや機械学習を用いてリアルタイムで分析し、不審な挙動やサイバー攻撃の兆候を検知します。
  3. 詳細な調査と可視化: 検出された脅威に対し、何が起こり、どこから始まり、どのように広がったのかを時系列で詳細に可視化し、攻撃の全貌を把握できるようにします。
  4. 迅速な対応: 脅威が確認された場合、感染したエンドポイントをネットワークから隔離したり、不審なプロセスを停止したり、ファイルを削除したりするなど、管理者が迅速に初動対応を行える機能を提供します。

EDRは、脅威の早期発見と迅速な封じ込めにより、被害の拡大を最小限に抑える上で不可欠なツールとなっています。

XDR (Extended Detection and Response) とは?

XDR(Extended Detection and Response)は、EDRをさらに発展させ、検出・対応の範囲をエンドポイントに限定せず、メール、クラウド、ネットワーク、IDなど複数のセキュリティ層に拡張し、それらの情報を統合して分析・対応を行うソリューションです。

XDRの主な特徴とメリット

  1. 検出範囲の拡大: EDRがエンドポイントに特化しているのに対し、XDRはMicrosoft 365(メール、クラウド)、ID管理(Azure AD)、ネットワークデバイス、SaaSアプリケーションなど、企業が利用する多岐にわたるセキュリティ製品からのログやアラートを統合します。
  2. 統合的な可視化と相関分析: 各セキュリティ層からの情報を一元的に収集し、AIや機械学習を活用して相関分析を行うことで、個々のセキュリティ製品では見逃されがちな、より複雑で高度な攻撃パターンを検知します。
  3. より迅速で包括的な対応: 複数のセキュリティ層にわたる脅威を統合的に把握できるため、攻撃全体を理解し、エンドポイントだけでなく、メールボックスの隔離、ユーザーアカウントの停止など、より広範囲で迅速な対応が可能になります。
  4. セキュリティ運用負荷の軽減: 複数のアラートを自動で関連付け、ノイズを削減することで、セキュリティアナリストの負担を軽減し、本当に対応すべき脅威に集中できるようになります。

XDRは、バラバラに管理されていたセキュリティ情報を統合することで、より高度なセキュリティ運用と効率化を実現する、まさに「拡張された検出と対応」のソリューションです。

EDR/XDR導入のメリット

EDR/XDRを導入することで、企業は以下のようなメリットを享受できます。

  • 脅威の早期発見と可視化: 従来の対策では見過ごされていた未知の脅威や侵入後の不審な活動を早期に検知し、攻撃の全体像を把握できます。
  • 迅速な対応と被害拡大防止: 検知後の初動対応(隔離、プロセス停止など)を迅速に行い、ランサムウェア感染や情報漏洩といった被害の拡大を効果的に食い止めます。
  • セキュリティレベルの劇的な向上: 侵入を前提とした多層防御の実現により、企業のサイバーレジリエンス(回復力)を高めます。
  • セキュリティ運用の効率化(特にXDR): 複数ソースからの情報を統合・相関分析することで、アラートのノイズを削減し、セキュリティ担当者の運用負荷を軽減します。

EDR/XDR導入を検討する際のポイント

EDR/XDRの導入を成功させるためには、以下の点を考慮することが重要です。

  • 自社のセキュリティ要件と規模: どこまで対応範囲を求めるか(EDRで十分か、XDRが必要か)、管理対象のエンドポイント数、予算などを明確にします。
  • 既存セキュリティ製品との連携: 現在利用しているアンチウイルス、ファイアウォール、ID管理システムなどとスムーズに連携できる製品を選びましょう。特にXDRの場合は、既存のMicrosoft 365環境などとの親和性が重要です。
  • 誤検知(False Positive)への対応: 高度な検知機能を持つため、正当な処理を誤って脅威と判断する可能性もあります。誤検知の調整や対応のしやすさも製品選定のポイントです。

まとめ

現代のサイバー攻撃は、もはや侵入を完全に防ぐことは困難であるという前提に立って対策を講じる必要があります。EDRやXDRは、侵入後の脅威を早期に発見し、迅速に対応することで、被害を最小限に抑えるための強力なソリューションです。

自社の現状と課題を正確に把握し、最適なEDR/XDRソリューションを導入することで、企業のセキュリティ体制を大幅に強化し、ビジネスの継続性を確保しましょう。