近年、モバイルバッテリーによる火災や発熱事故のニュースを耳にすることがあります。スマートフォンやタブレットの必需品となったモバイルバッテリーですが、誤った製品選びや不適切な使用・廃棄は、思わぬ事故につながる危険性を秘めています。
特にタイでは様々な製品が流通しており、安全性を自分で見極めることが重要です。本記事では、タイでモバイルバッテリーを選ぶ際のポイントと、安全な廃棄方法について解説します。
1.安全なモバイルバッテリーの選び方
(1) 信頼できるブランドと正規店で購入する
- 有名メーカーを選ぶ: Anker、Xiaomi、PowerCore (Anker)、Romossなど、実績と信頼のあるメーカーの製品を選びましょう。
- 正規販売店で購入: 電器店、公式オンラインストア、大手ECサイト内の公式ショップなど、正規の販売ルートで購入することが重要です。
(2) タイ工業標準協会 (TISI) 認証マークを確認する
- タイで販売される電気製品には、タイ工業標準協会 (TISI: Thai Industrial Standards Institute) の認証が義務付けられています。製品パッケージや本体に「TISIマーク」が記載されているか必ず確認しましょう。これは、製品が国の定める安全基準を満たしている証です。
(3) 安全保護機能が充実しているかを確認する
以下の保護機能が搭載されている製品を選びましょう。製品情報やパッケージに記載されています。
- 過充電保護: バッテリーが満充電になった後も充電が続き、過充電になるのを防ぐ。
- 過放電保護: バッテリー残量が極端に少なくなり、劣化するのを防ぐ。
- 過電流保護: 大量の電流が流れて発熱・発火するのを防ぐ。
- 短絡(ショート)保護: 回路がショートした際に電流を遮断する。
- 過熱保護: バッテリーが高温になりすぎるのを防ぐ。
(4) バッテリーの種類と品質
- 一般的に、リチウムイオンポリマーバッテリー (Li-Polymer) は、液漏れや発火のリスクが比較的低いとされています。しかし、リチウムイオンバッテリーも、しっかりとした保護回路と品質管理がされていれば安全です。
- 製品レビューや評価も参考に、品質が安定しているかを確認しましょう。
(5) 外観と保証の確認
- 購入時に、外箱や本体に凹み、膨らみ、傷、破損がないか確認してください。
- 購入後の保証期間や、故障時のサポート体制も確認しておきましょう。
2.モバイルバッテリーの安全な使い方 (補足)
- 充電中の放置を避ける: 充電中は、異常がないか時々確認しましょう。
- 高温多湿を避ける: 直射日光の当たる場所や車内など、高温になる場所に放置しない。
- 衝撃を与えない: 落下させたり、強い衝撃を与えたりしない。
- 異変を感じたら使用中止: 膨らみ、異臭、異常な発熱、変形などの異変を感じたら、すぐに使用を中止し、安全な場所に移動させてください。特にバッテリーの膨張については、次の項目で詳しく解説します。
3.特に注意すべき異変:バッテリーの膨張とその危険性
モバイルバッテリーが膨らんでいるのを見つけたら、それはバッテリー内部でガスが発生している非常に危険な状態です。
(1) バッテリー膨張のメカニズムと原因
バッテリーが膨らむのは、主にリチウムイオンバッテリーの内部で、電解液が分解されることでガス(主に炭酸ガスや水素ガスなど)が発生するためです。
主な原因:
- 経年劣化: バッテリーは使用と共に劣化し、内部の化学反応が不安定になりガスが発生しやすくなります。
- 過充電・過放電: 必要以上に充電したり、バッテリーが完全に空に近い状態で長時間放置されたりすることで、内部にダメージが生じガス発生の原因となります。
- 高温環境での使用・保管: バッテリーが高温に晒されると、内部の化学反応が過剰に進み、劣化やガス発生を早めます。
- 物理的な損傷: 落下や強い衝撃によってバッテリー内部の構造が破損し、ガスが発生することがあります。
- 製造不良: ごく稀に、製造過程での不具合が原因で初期からガスが発生するケースもあります。
(2) 膨らんだバッテリーの危険性
内部にガスが溜まり圧力が非常に高まっているため、以下のリスクがあります。
- 発熱・発火: 内部のガスが可燃性である場合や、圧力が限界に達して外部の空気に触れることで、激しい発熱、発火、さらには爆発につながる可能性があります。
- 液漏れ: 膨張によりバッテリーケースが破損し、内部の電解液が漏れ出すことがあります。電解液は腐食性があり、人体に有害です。
(3) 膨らんだバッテリーを見つけたら
- 直ちに使用を中止する: 充電も使用も絶対にやめてください。
- 安全な場所に隔離する: 周囲に燃えやすいものがない、風通しの良い場所に置いてください。可能であれば、金属製の容器などに入れておくとより安全です。
- 絶対に分解しない: 内部のガスや物質が外部の空気と反応すると、発火や爆発の危険性が極めて高まります。
- 速やかに適切に廃棄する: 一般ごみとしては捨てず、自治体や家電量販店、専門のリサイクル業者など、推奨される方法で安全に廃棄してください。
4.モバイルバッテリーの安全な廃棄方法 (タイ国内)
モバイルバッテリーは、リチウムイオン電池を使用しているため、一般ごみとして捨ててはいけません。 誤った廃棄は、ごみ収集車や処理施設での火災事故につながる可能性があります。
タイでは、以下のような方法での廃棄が推奨されます。
(1) 小売店の回収ボックスを利用する
- 大手家電量販店 (例: JIB, Banana IT, Power Buyなど) や、大手通信キャリア (例: AIS, True, Dtacなど)、一部のショッピングモールには、使用済みバッテリーの回収ボックスが設置されている場合があります。購入店舗や最寄りの店舗に問い合わせてみましょう。
(2) リサイクルセンターや指定回収場所
- 一部の自治体やリサイクル事業者が、電子廃棄物(e-waste)の一環として、モバイルバッテリーの回収を行っている場合があります。お住まいの地域の自治体(テーサバーンやアボーチョーなど)のウェブサイトを確認するか、直接問い合わせてみてください。
- 特にバンコクでは、BMA (Bangkok Metropolitan Administration) が電子廃棄物の回収イベントを定期的に開催していることがあります。
(3) 製造元や輸入代理店に相談する
- 購入した製品のメーカーや、タイの正規輸入代理店が、回収プログラムを提供している場合があります。ウェブサイトなどで確認してみましょう。
廃棄時の注意点
- 絶縁する: 端子部分をセロハンテープなどで覆い、ショートを防いでください。
- 分解しない: 絶対にモバイルバッテリーを分解したり、穴を開けたりしないでください。内部の物質が空気と反応して発火する危険があります。
- 濡らさない: 水に濡らさないように注意してください。
まとめ
モバイルバッテリーは私たちの生活を便利にするツールですが、安全に使うためには「賢い選び方」と「正しい廃棄方法」を知ることが不可欠です。タイでモバイルバッテリーを購入する際は、TISIマークを確認し、信頼できる製品を選ぶこと。そして、使用済みになった際は、決して一般ごみとして捨てず、適切な方法でリサイクルに回すことを心がけましょう。